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去年の仙台短篇映画祭では『パンと裏通り』を上映したアッバス・キアロスタミの2002年の作品『10話』。
(東京では2003年夏頃に公開)この映画は2つのアングルで成立していると言っても過言ではありません。
車のフロントガラスの近くであろう前方付近に据え付けられたDVカメラがこの映画をかたちづくっています。
その事実に暗闇の中でスクリーンと対峙している観客(私)は息をのみ、ただ呆然と、しかし興奮しながら見つめ続けてしまいます。そして最後にはこの映画が放つ力に心が震え、何かを感じずにはいられません。
主人公はこれまでのキアロスタミ映画に登場する少年ではなく、美しいカメラマンの女性です。とはいえ「女性映画」ではありません。かといって「イラン」の映画でもありません。多くの人が感じる働くこと、愛すること、子供を育てること、そして生きることが車に乗る人々の口から発せられます。
しかし、それらの言葉は解決しなければならない仰々しいテーマなど(スローガンのような)ではなく、ただ、そこに、ある、だけなのです。
主人公が運転する指には指輪がはめられているのですが、その指輪が大きすぎるためか、宝石が下へずり下がっていること、前髪が時に垂れ下がり、チャドルから見えてしまうこと、そのような生々しい瞬間瞬間がこの映画であり、それらと同列上に彼女達から語られる言葉があります。
ぜひ多くの方にこの映画を見ていただいて、いろいろな思いを抱いていただけたらと思います。
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- 10話
2002年/35mm(DV撮影)/カラー/
フランス、イラン/94分
監督:アッバス・キアロスタミ
出演:アニア・アクバリ、ロヤー・アラブシャヒ、
キャタユン・タレブザデー
「そして人生はつづく」「桜桃の味」のアッバス・キアロスタミが放つ美しさと哀しみで彩られる10の話。6人の女性が抱えた思いと人生の壁。キアロスタミははじめて女性の視点から世界を見つめた。
「アミンはママのこどもだけど、ママのものじゃないわ。世界のものよ。世界で生きている」
「いったい僕はどうすればいいんだ?」
「ただ真実を見ればいいのよ」
自身の生きる日常にこそ、真実が存在することを改めて知らされる珠玉の作品。
仙台初上映。
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撮り続ける、青山真治
『EUREKA』のカンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞・エキュメニック賞受賞も記憶に新しい映画監督、青山真治は、2001年から2003年にかけてフィクションとドキュメンタリーの垣根を行き来し、さらにテレビドラマ、小説などバラエティに富んだ作品を生み出し続けた。その中から『私立探偵 濱マイク 名前のない森』の2002年ベルリン映画祭に出品された71分版(仙台初上映)を含めた4作品を上映し、青山真治監督と、雑誌『Invitation』『ユリイカ』などで映画批評を執筆している映画批評家、樋口泰人氏を迎え「青山真治の現在」についてのトークセッションを予定。
- 軒下のならず者みたいに
2003年/DV/カラー/41分
監督・脚本/青山真治
出演/斎藤陽一郎・中村優子・大久保鷹
- 秋聲旅日記
2003年/DV/カラー/43分
監督・脚本/青山真治
原作/徳田秋聲
出演/嶋田久作・とよた真帆・ナシモトタオ
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撮り続ける、青山真治2
- 海流から遠く離れて
2003年/DV/カラー/19分
監督・脚本/青山真治
出演/光石研
- 私立探偵 濱マイク 名前のない森
2001/35mm/カラー/71分/
監督・脚本/青山真治
出演/永瀬正敏・鈴木京香・大塚寧々・原田芳雄